◎ベルギービール
ベルギーには160のビールの醸造所があり、約800種類のビールを製造している。
アルコール度3%~10%のものまであり、またハーブやフルーツ、スパイスを
使ったものなど種類は豊富。
ベルギービールには修道院でつくったビールがある。
2種類ありトラピストビールとアビービールである。
・トラピストビール
シトー派の中でも厳しい戒律でしられるトラピスト会修道院の内部の
醸造所のみでつくられたもののみトラピストビールを名乗ることができる。
現在世界にトラピストビールを名乗ることが許されているのは6ヶ所しかない、
そのすべてがベルギーにある。
ワロン地方にはシメイ、オルヴァル、ロシュフォールと
3つのビールが世界的に有名。
●オルヴァルビール
オルヴァル大修道院の中で造られるビールで、ホップの量が多く、苦いが強いのが特徴。
「オルヴァルビールは初めて飲む人がおいしいと感じるビールではない」と工場担当者も
言うくらい。しかしこの味を好きになった人は病み付きになる。
万人にすかれるビールを目指していないので生産量も多くない。瓶つめ能力も1時間2万本。
(醸造)
修道院の廃墟内にあるマチルダの泉の水、大麦モルト、
アロマホップ(ドイツ産とスロベニア産)、少量のキャンディーシュガーが原料。
醸造所での貯蔵期間は3週間、と通常のビールより長く熟成させる。さらに直前に少量の
キャンディーシュガーを加えてビン内発酵を確実にしたうえ、発酵所で5,6週間も
ビン内発酵させる。第3次発酵である。こうしてやっと出荷である。フィルターろ過や
熱処理は一切行わない。オルヴァルビールのアルコール度は6.2%で、第3次発酵では
温度が摂氏15度。そのため12度から14度くらいで冷やすのが理想とされる。
また日本ビールは生産してからできるだけ早く飲んだほうがよいとされるが、
オルヴァルビールは5年もつ。その間も発酵していく。
オルヴァルのビールは初め修道院再建の資金つくりのため。最初の醸造責任者は
ドイツ人だったという。50年前に最新設備を導入して現在にいたるが、原料、醸造法などは
伝統をまもり、今でも1種類の商品しか作っていない。
・アビービール
修道院でつくるビールの伝統的なレシピや醸造法を受け継いで委託された醸造所のみが
製造するビール。シネイなど。
◎ ビールの基本情報
ビールはワインと違って発酵させるために酵母(イースト)をくわえる。
その酵母が発酵のあと上に浮かんでくるものを
上面発酵酵母(この酵母をつかって作ったビールを上面発酵ビール)、
下に沈むものを下面発酵酵母(この酵母を使って造ったビールを下面発酵ビール)に
分けられる。日本でなじみがあるピルスナーは下面発酵ビールで、
ベルギーでもこの下面発酵ビールが全体の約68%をしめる。
しかし上面発酵ビールや自然発酵ビールにこそベルギービールの本質がある。
上面発酵ビール(エール)には
・トラピストビール
・アビービール
・ホワイトビール、レッドビール、ブラウンビール
→モルト50%、小麦40%、カラス麦10%、香り付けにハーブ
(オレンジピール、コリアンダーの種など)
がある。
・自然発酵ビール(Spontaneous fermentation)
自然発酵でできるビールをランビックという。
またそのランビックの若い一年ものと
オールド・ランビックをブレンドし、瓶詰めしたあと、数年ねかせ、さらに発酵、熟成させたものを
グーズと呼んでいます。
ランビックにクリーク(すっぱいさくらんぼで生食には適さずパイやジャムにする種類)を
漬け込んだものをクリークと呼ぶ。クリークというとこの果物というより、
ビールを指す場合が多い。
そのほかにも、砂糖を加えたファロ、
桃のジュースを加えたペッシャレス、木いちごを加えたフランボワーズがある。
ベルギーは気候的にワインを作ることができない、そのためワインのような色彩と香りの
クリークを作られるようになった。ランビックは培養酵母を加えずに発酵させる、
醸造方法もワインに似ている。
ランビックの素材はホップと水、大麦のモルトとモルトに
しない小麦を7対3、または6対4の割合で用いる。ホップの香りはランビックの味を
そこなうので新しいホップはつかわず、収穫から1~3年たったふるいホップを使うことが大切。
ホップの目的は保存がきくように、綺麗な泡が出るようにするためである。
ランビックの醸造所はブリュッセルから約15キロ以内のゼナ渓谷に集中している。
ほかの土地ではランビックはつくれない。20世紀初頭には醸造所は50~60あった。
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